りあたいや
ぽーさんと、リアタイヤ一人称でオリジナル書いてみよーぜとかいうまたまたアホなノリをやってたんですが。
すみません。挫折。てか、無理。
で終わらせようとしたんですが。
http://www.geocities.jp/psk3233/index.htmlの日記を見て下さい。
マジで書いてやがりました。ぽーさん。すげえというか、どうしようというか。
という訳で、とりあえず書いてみました。
僕はまだ、この世界のことをあまり知らない。
僕たちはそれに縛られて、だからこそ、こうしてこの場にいる訳だけれども。
朝靄がゆっくりと引いていく。僕に最初に映ったのは地に落ちたパン屑を啄ばむすずめたちの姿だった。前へ。後へ。消えて。また映って。
新しい一日はそうして幕を開ける。斜め45度に傾いた世界が僕のすべて。見える範囲は限られている。
けど、それがどうしたって言うんだ。
だって、僕はそれ以上の世界なんか知らないし、それだけで十分世界はきれいなんだから。
たったそれだけの世界しか知らない僕。そんな僕だから親の顔も当たり前のように知らなかった。けど、僕には兄弟がいた。ほんの少しだけ離れて、その姿を見ることはできないけれど、けど、確かにそこにいるんだ。
新聞配達の青年が来て、それですずめたちが飛び立って、僕の世界が束の間の静寂を得た時、兄弟は僕に話し掛けてきた。
「なあ」
「なに?」
「もうすぐアイツが来る時間だよな」
「そうだね」
自然と言葉が弾む。
兄弟がアイツと呼ぶのは今のところ一人しかいない。彼が来ると、僕の視界は大きく変わる。動く。そんな人だ。
僕はそれが嬉しくて、その人が来るのを毎日毎日楽しみにしている。そんな僕の期待通りに、彼は時間通り、毎日世界を動かしてくれた。
けど、そんな彼のことを兄弟はあまり好いていないらしい。憂鬱そうに溜息を吐くと、呆れたような声で訊ねた。
「お前……そんなに嬉しいか」
「嬉しいに決まってるよ。彼が来ると僕たちの世界は広がるんだ。それって素晴らしい事じゃない?」
心底嬉しそうに僕。
そんな僕にやれやれ、という様子で兄弟は言う。「俺は回るのは嫌いなんだよ。酔いやすいからな」
それから彼はしばらく黙った。
僕もつられるように黙った。
不意に声が聞こえる。弾むように僕の視界に入ってきたのは小さな女の子だった。その子は大きな女の人に手を繋いでもらって嬉しそうにはしゃいでいる。
「そっちに誰かいるのか?」
兄弟が訊ねた。
「うん。小さな女の子が。多分、あの場所に行くんじゃないかな」
「あの場所?」
「ほら、たまに通りかかる……小さな子供たちがいっぱいいる所」
「ふうん。そんなところがあったんだな」
「君もそこを知ってる筈だけど?」
「お生憎様。小さな子供が集まってる所なんて見た事ねえよ」
「勿体無いね。凄く素敵な所なんだよ。みんな、すごく楽しそうにしてる」
ふうん。と彼はお決まりの声を漏らした。僕はそんな兄弟の様子にくすくすと笑う。
「そう言えば、さ」
「なに?」
「よく俺たちの近くを通る子いるだろ」
「うん。あの、やんちゃそうな男の子でしょ?」
「そう。たまに俺を蹴飛ばしてきやがったりした奴。アイツなんだけどさ、最近でかくなってないか?」
「そうだね。けど、それは誰だってそうみたいだよ。すずめもカラスも小さな虫たちも、みんなどんどん大きくなってる」
「やっぱそうだよな……」
兄弟はやけに沈んだ声でそう言った。
だから、僕は少しだけ心配になってしまって「どうしたんだい?」と訊ねたら、
「いや、世界はどれも大きくなっていってるのに、なんで俺たちだけ小さくなっていってるんだろうな」って答えた。
僕はそんな兄弟に何も返すことができなかった。
世界は回る。くるくる回る。
くるくるくるくる世界は回る。
どんどんどんどん世界は広がる。
けれど僕たちは萎んでいく。
小さく小さくなっていく。
どんどんどんどん消えていく。