はじめまして、ちんぽ
快眠の果てに珍しく目覚ましの音に叩き起こされないような気持ちのいい朝が訪れたわけではあるが。
この股間にある違和感はどうしたことであろう。
「なななななななっ」
言葉が出ない。なんかこう、妙にパンツがきついなぁとか思ってたらはみ出しまくりで、こんにちはちんぽ。
しかも。
――どうだ、驚いたか。
あまつさえ、喋った。
ちんぽが。
「驚くわ、アホッ」
返してしまう自分が悲しい。
ちんぽに。
「とりあえず、わたし、女の子だからっ。花も恥らう現役女子中学生だからっ」
――何が言いたい?
「ぶっちゃけ帰れ」
素で言うと、ちんぽはちょっとしゅんとして小さくなった。
ナルホド。さっきは俗に言うアサダチというものだったらしい。
そう言えば、クラスメイトから聞いたことがある。男の子は朝になるとその……おちんちんがおっきくなっちゃうらしいのだ。
まあ、言う方も真っ赤なら言われる方も真っ赤なその話。発生源のクラスメイトは実の兄のそれを運悪く見てしまったらしく「さいてーっ」とぷりぷりしながら、その話を振ってきた訳ではあるが、これは割愛する。もう一度聞こうとすると怒るのだ。どうしたもんであろう。
それはさておいて。
「んで、どうやったら元に戻るの?」
――決まっているであろう。
んで、ちんぽがとんでもないこと言った。
――出せばいいのだ。
「は?」
――だから出せ。心イクまで出し尽くすのだ。
「何を?」
――精液。
思い切り殴った。
あまりの痛さに悶絶した。
「うううううう……」
――汝は阿呆か。
「うるさい黙れ」
しかし、こんなに痛いものだったとは。
そんなことクラスの男子には聞けないし、うちには兄弟はいないから、全然知らなかった。
これからはそうなってしまった男の子を少しは労わってあげよう。
……って!?
「あああああああああああああああ!!」
――どうした。
「わわ、わたし今までパパのしか見たことなかったのにっ」
――そうか。
「そうかじゃない! 初めてなの! わたし、花も恥らう乙女なの!」
わかって欲しい。初心な女の子が父親以外のおちんちんを見てしまった時の気持ちを。
その上で少しぐらい謝ってくれてもいいのではないだろうか。
初めてをこんな形で奪われてしまったことを少しは同情してくれてもいいのではないだろうか。
――ふむ。
少し考えるちんぽ。
――しかも、その上初めて触ったちんぽが自分のだ。こんな女は他にはいまい。
よかったな、とちんぽ。
記録更新だ、とちんぽ。
ありえないぐらいムカついた。
だけど、殴るとまた悶絶してしまうのでデコピンで弾くことで許すことにした。
ありえないことに、ちょっと、気持ちよかった。
――それは僥倖だ。我も汝に憑いてよかった。
「うるさいうるさい。心の中を読むなっ」
――しかし、我と汝は一心同体。
「最高に最悪よっ。いいからアンタちょっと黙りなさい!」
…………。
「無言でおちんちん勃たすなっ」
――ならばどうすればいいのだ。
「いいから、黙ってわたしから出て行けばいいのっ」
――そうか。元々我も汝の身に長居するつもりはない。
びゅるりんっと勃起して。
――いいからコスれ。さすれば道は開かれん。
「乙女にコスれとか言うなーーーーーーーーーっっ」
その日、わたしは学校を休んだのであるが、理由は言いたくない。
乙女は大変なのである。
そして、それからしばらく先、再びおちんちんに触ることになった時、「妙に手馴れてるね」とメッチャ引かれて、わたしのずっと大切にしてきた乙女ちっくハートにひびが入ることになるのであるが。
それもまた、別のお話。