こんぺ前日の出来事。



 大体、金曜の10時くらい。


<ぽー>いまからかくわ<りょと>マジかよ<りょと>白紙?<ぽー>余裕で<ぽー>剣と魔法の物語を綴るぜ<りょと>上等<りょと>俺も今からぶっこもう


 という訳で、その成果を見せようと思います。








拝啓

村鳥杏はどこにでもいるごく普通の女の子。
でも、その女の子には誰にも言えない秘密がありました。
その女の子、本当はこの世界の人間じゃなかったのです。
(中略)
そんな訳で、彼女は魔法使いだったのです。
彼女の仕事はこの世界を壊そうとしている悪い魔法使いを倒すこと。
でも、魔法使いにはパートナーが必要です。
だから、あなたも戦って下さい。
私は君に決めた!
放課後、体育館の裏で待ってます。来い。








「なんじゃこりゃーーーーーーーーーーっっっ!!」
 一見、アニメのプロローグで語られるような、しかもよりにもよって魔法少女みたいな、そんなファナティックな内容の手紙を見たのは、その日の放課後の話である。部活にも委員会にも何も所属していない彼、中村賢はそそくさと家に帰らんとまっすぐに下駄箱に向かった。そして、靴の上に見慣れぬ封筒を見つけた彼は、ドキドキと激しく鼓動する胸と、湧き上がる期待を必死になって隠しながら(でも、顔には出まくっている)、今ようやく封筒を開いた結果がこれである。
「つか、適当! あと、来いって何さーーーーーーーーーっっ!!」
 ちなみに、(中略)まで間違いなく手紙の本文である。適当にも程があった。
「こんな手紙で行く訳ねえよ! というか、返せ! 俺のドキドキを返せ!」
 そう手紙を引き千切り、丸めてゴミ箱に捨てた。そして、ちょっとでもこの憤りをなんとかしようとゴミ箱に屁をしてから、再び帰り道を彼は歩き出した。
 ちょっとスゥっとしたのだった。スカシだけに。




 村鳥杏という少女は、賢にとってクラスメートだった。
 何度席替えがあっても、何故か変わらず窓際の最後尾に陣取っている少女。少し茶色がかったロングヘアーがとても似合っていて、ぱっと見は凄く可愛く見えた。実際、声をかけにいった男子を何人も見ている。
 けれど、結果は全て玉砕。彼女はずっと外を眺めたまま、返事することすらしなかった。それが幾度となく繰り返されると何時の間にか彼女は鉄壁の美少女と渾名が付き、常に窓際にいることを不思議がったクラスメートから窓際の女王と名付けられ、今では美少女という認識も薄れ、鋼鉄の窓際族という渾名に落ち着いていた。今では教師すらまともに彼女を指名しようとしない。クラスきっての変わり者というのが村鳥杏という少女であった。
 それがあれである。なんか腐りかけのアンパンを肴に鬼殺し一気飲みしたような超絶不思議ちゃん時空のあの手紙である。賢が見た瞬間三秒で悪戯だと判断して帰り道に歩みを戻したのも仕方のないことではあった。
 が、まあ、なんだ。そんな鉄窓(通称)だったからこそ、気になってしまったのも仕方ないことなのであったのだ。
 結局、帰り道を再び逆走して、指定の体育館裏に辿り着いたのは下校時刻から一時間後。この間、賢は凄まじい戦いを制していた。葛藤に次ぐ葛藤の果てに天使と悪魔と近所の爺さんと幼稚園の頃の先生にお伺いをたて、最終的に家に帰って韓流ドラマ見ながらボリボリ尻をかいてる母親の顔を見て決めた。ああ、俺、これの息子なんだと思ったら、ちょっと一見ラブレター風の怪文書でも無視できなくなってしまったのである。
 そして、着いた頃にはもう外も赤みを帯びてきていて、下校時刻を過ぎた体育館裏には上履きのゴムが体育館の床を擦る音と何処からともなく聞こえてくるトランペットの音。そして――。
 そこにいた少女はただ静かにそこに佇んでいた。
 息が止まる。紅色の陽光に染まって、彼女はこちらを見る。そして、柔らかく微笑む。
 ずっと一緒のクラスだったのに、そんな彼女の表情は初めて見るものだった。
 彼女はそっと歩み寄ってきて、そしてその歩みが近づいてくるにつれて、賢の心臓は破裂するくらいに激しく鼓動し始めた。
「ありがとう。来てくれて」
 彼女が確かにそう言ったのを覚えている。
 そして、賢のすぐ目の前まで来た彼女は、そのまま前に進むのを止めず、ふわっとした微笑みを浮かべたままで。
 視界に彼女の顔がいっぱいに広がる。もう何がなんだかわからなくて、何か言おうにも声がでなくて、結局出来たのは彼女に合わせるように、自分も目を閉じるくらいで。
 だから、後になって憶えているのは彼女のそんな微笑みと唇の柔らかさ。
 そう、彼と彼女はキスをした。赤色の夕陽が見守っている。野球部の掛け声が遠くに聞こえる。
 そして、あちこちから悲鳴っぽいのが聞こえたのは、気のせいだと思いたい。






魔法少女☆モラトリアム







 さて、次の日である。
 昨日のことで悶々として眠れなかったため、目にどでかい隈を作っている賢であったが、それでも人生バラ色なことには違いない。血走った目は緩やかな曲線を描き、同じように口も緩やかにカーブを描き。そして、教室の前まで行くとさあ、いざ行かん。扉を開けるときっと彼女が頬を赤らめながら俺の登校を待っている。あと、俺に負けてるアンダードッグ共(そう、人生的に)がそんな様子を見てきっと不思議がり、事情を聴いて悔しがり、でも暖かく祝福してくれるはずだ。そう、きっとそうに違いない。
 なんて清々しい朝なんだろう、と賢は思った。目の隈を取るように、もう一度ゴシゴシと顔を擦って、そして生まれ変わったような綺麗な、まるで聖職者でザビエルのお門を奪うアルカイックスマイルにムリヤリ表情を直して。
 そして、光満ちる教室へと、ようやく足を運んだ。
「やあ、みんな」
「おはよう、中村ファッキンベイベー」
「なんだそれ」
 清々しい朝が台無しである。






<りょと>まあ、なんだ<ぽー>うん<りょと>今から書いても二人とも無理だったで終わるオチなんだけどな<ぽー>それがわかってるなら十分だ<りょと> 今の時点で超眠いしね <ぽー>すでにな


 という訳で、頑張ったんだよ?